三吉神社現場調査報告
この度太平山三吉神社現場調査を行ったところ、建物建立から150年もの歴史のある建物とお聞きしました。建物自体150年を経過しているものとは思えないほどきれいな状態で保存されていると感銘を受けました。建物の作り並びに修繕しなくてはならないというところは下記のように思われます。
(外観)
・柱および頭貫の部分に彫刻が施されております。他の社を見ますと、柱にしても面を取る程度で彫刻を施しているところは少ないと思います。頭貫も同様です。向拝部分に関しても獅子・獏(ばく)・力士像と彫刻が施されており、近年ではそこまでの施しているところは数少ないのが現状です。
・軒先部分に関しても扇垂木の施工となっており、手をかけた状況が細部にわたって感じられます。戸組に関しても軒先の手を調整する尾垂木を施してあり、二手先まで出ております。さらに出し桁した部分に軒支(のきし)輪(りん)を施し、貴品の高さが物語っております。
・床周りには浜(はま)縁(えん)がありますが、そこの部分は年数により木材の老朽化が見えております。特に向かって左側の奥脇障子の前部分が下がっております。浜縁の板周りの改修が必要かと考えられます。
・屋根は平葺きが桟瓦、蓑の甲にも浅瓦2枚折り、利根丸、隅棟等を熨斗(のし)葺(ぶ)きで、胸には鯱(しゃちほこ)が施され、重圧感を感じる屋根となっております。ただよほどの年数が経過化しているため瓦自体の防水効果は少なくなっていることと、当時は杉皮を瓦の下地に敷き詰めていたものと思いますがその皮も腐れ風化している状況から、雨などが降るほぼ全域にわたり建物内に入り込んでいるものと思われます。
(内観)
拝殿に関しては若干向拝部分の雨がささり込んでいる雰囲気はあるものの、被害は少ないように思えます。拝殿は天井に絵天井を施されておりますが、屋根からの雨漏りが原因でせっかくの絵が滲んで読み取りにくい状況になっております。絵天井はこの神社・寺院に関係のある方や、特に象徴したいものなどを各天井板に描いたものであり、地域文化の象徴とも言えるものと思われます。本殿に関しては西側に面しており、雨風がささり込んで天井がすべて交換が必要かと思われます。本殿は、神社の一番大事な本尊様を納めるところなので、神社の中では一番重要なところであります。まとめ、三吉神社をこの度拝見させていただき、この時代のものとしては大変素晴らしい造りであり、地元の方並びに総代様のお力により、これまで維持されてきたわけですがこれからも、このような歴史的建造物を保存するのは大変なものですが、今言えることとしたらまず、屋根の葺き替えを早急にすること、本殿周りの改修を早急にすることが急務の課題と考えられます。近年、これら歴史的建造物を手掛けられる職人も少なくなっている現状です。これほどの建物を保存するのは、地域においても後世に残す重要な役割と思われます。